東日本大震災発生から半年。
アメリカ同時多発テロ事件から10年。
生涯忘れられぬ出来事。
これまで三度、気仙沼を訪ねた。
今まで一度も訪れたことのない宮城県。
縁とは不思議なものだ。
【6月13日】
混雑する新幹線で一ノ関。
車で気仙沼へ移動。
目にした景色に愕然とし五感が震えた。
ここまでは大丈夫、ここからは大丈夫じゃない。
明確な線引きがある。
港周辺を警戒中の兵庫県警の方々に見えない絆を感じる。
地元の活気の為にと、いち早く再開された店の内壁は
約1mの高さに一筋の痕跡が残る。
そこまでヘドロで埋まっていたそうだ。
まるで命の境界線。
モニター越しには見えない現実。
【6月14日】
地盤沈下の影響で冠水する沿岸部。
港の周りは甚大な被害だ。
破壊された船着き場。
広島県江田島市より無償貸与された
カーフェリー「ドリームのうみ」に乗船。
船上から辺りを見渡す。
焼け焦げた2隻の船。
海上でも漂う異臭に相反し
フェリーを追いかけ元気に飛び回る海鳥たち。
気仙沼の防波堤と呼ばれる大島へ。
直撃した津波は島を分断したそうだ。
冠水する港。
積み上げられた瓦礫の山々。
陸地へ取り残された巨大船2隻。
海上火災の延焼で焼け焦げた木々。
寸断された道路。
俯瞰した大島は
目を凝らさなければ本当に綺麗な島だ。
横を向けば高所に拘らず山火事の跡。
着火した発泡スチロールが海から飛んできたらしい。
地元の方との会話中、初めての来島だと知れると
こんな大島は見て欲しくなかったと言われる。
こんなんじゃないと。
復興したら必ず来るので、その日が楽しみだと伝えた。
互いに笑顔で別れる。
【9月8日】
3ヶ月ぶりの気仙沼。
前日から9時間程かけ都内より車移動。
稀に見る美しい朝日が眠気を吹き飛ばす。
姿を現した気仙沼は6月より臭いが軽減されている。
だが見た目は3ヶ月前と変わらない。
この一帯は建設規制がかかり、壊れた信号機の修理さえ出来ないそうだ。
朝の移動の車中、基礎だけになった建物跡で、何かを探している女性を見かける。
一見なにもない見晴らしの良い田舎道だが、確かにそこにはあったのだ。
沿岸部以外の町並みは3ヶ月前より少しは前進したようだ。
側溝を埋め尽くす泥に生えた植物に生命を見る。
【9月9日】
昨日に続き美しい夜明け。
朝靄に包まれた気仙沼は、浮世離れし幻想的だ。
移動の車中、昨日と同じ基礎だけの建物跡で、同じ女性が何かを探していた。
見つかって欲しいと心から願う。
路上では『津波浸水想定区域』の案内標識がやけに目に付く。
津波の被害にあった建物の持ち主は
再建のため最低限の骨格を残し、その全てを片付けられるとき
寂しさと諦め、そして何より優しい顔をしていた。
【9月12日】
急きょ先週に続き気仙沼へ。
まだまだ新幹線は混み合っている。
窓の外は6年ぶりに中秋の満月。
一ノ関駅は以前より活気づいている。
【9月13日】
気仙沼港付近はマンホールから水が溢れ出し
溜まった水は油分を含みケミカルな美しさを放つ。
少しずつ整理が進む緑の苔に覆われた建物跡。
我関せず歩く海鳥。
芝生の綺麗な一画。
大漁旗がはためき、青や緑のビン玉が並んでいる。
ガラス板には『GROUND ZERO 風の広場』の文字。
ガラス越しの古時計は2時46分を指していた。
約束にはまだ早いが3ヶ月ぶりに大島へ。
今回も「ドリームのうみ」乗船。
フェリー周りを飛び回る海鳥は前回より断然多い。
疲れたら船に止まり、再びフェリーの周りを飛び回る。
船に身を任せ、ずっと乗ってる鳥もいる。
鳥は鳥なりの知恵で生き延びてきたのだろう。
3ヶ月ぶりの大島。
瓦礫の山々は嵩が減った。
取り残された2隻の大型船は姿を消し、閉ざされていた県道が開通している。
海と陸を隔てるため、以前は無かった土嚢が並ぶ。
山火事で丸見えだった地肌に、新たな緑が芽生えている。
前回は足元から折れていた二宮金次郎像。
前にもお会いした地元の方に
少し安心したと伝えたら、笑みがこぼれた。
だが、残念ながら、それだけではない。
地元の怒り、地元での怒り、矛盾、葛藤。
今回もいろんな話を聞かせてもらった。
海鳥と共に大島を発つ。
再び気仙沼港。
港の仮設トイレは潮位が高いと使えなくなる。
初めて被害の深刻な地区に足を踏み入れた。
海から離れているのに、水面にいる錯覚を起こす。
目の前の現実に、言葉を失う術しか持てない。
復興どころか復旧さえこれからだ。
沈下した地盤の根源的な問題も解決していない。
いろんな立場の話を聞いたが、復興を願う気持ちは同じだろう。
その為に何をするのか。
その為に何ができるか。
誰もの心にあり続けて欲しい。
アーチを描く電信柱。
巨大船に寄り添うぬいぐるみ。
人知れず咲いた花。
電線のない電信柱が規則正しく並んでいる。
いつかの未来へ、あの歌を重ね合わせる。
今歩いてるこの道は、いつか懐かしくなるだろう
今歩いてるこの道が、いつか懐かしくなればいい
今歩いてるこの道は、いつか懐かしくなるだろう
今歩いてるこの道が、いつか懐かしくなるはずだ


